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鷺沢萠、生きていれば43歳になる。
18歳で文学界新人賞を受賞した『川べりの道』で文壇にデビューしたが、一読して秀作だと思った。父が外に女をつくって家を出るが、23歳の姉と15歳の弟との間にそれをめぐって確執が生まれる。姉に言われて、少年は月に1度、養育費を受け取りに父に会いにゆく。引越しのドサクサに姉がなくしたと思い込んでいたガラスの器を父のところで見つけた少年は、それをこっそりと盗み出し、川べりに捨てる。
抑えた書き方がいい。少年がなぜガラスの器を盗み川べりに捨てたのか、その心理描写をいっさい排した書き方が実にいい。「これから夏が始まるのだ」と、それだけの結びである。その描写のうまさに惹かれてこの作家の作品を読むようになった。
在日韓国人とのハーフを父にもつクォーターだが、鷺沢が実際にそれを知ったのは20歳を過ぎてからだという。『駆ける少年』で自分のルーツとしての父親をじっくり描いている。本人はインタビューに答えて、「マシーンみたいに書いただけ」と謙遜しているが、けっしてそんなことはない。自然体で書いてはいるが、考えて書いているのだ。 『葉桜の日』はなかでも好きな作品だ。
4月11日は鷺沢の命日である。35歳の自殺だった。 PR |
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