
先に「熊野弁」を書いた。
が、紀伊半島の方言は土地土地で細かく分かれていて、コテコテの方言を使われるとさっぱり分からないことがよくある。
「今日わは何曜日なよ?」「今日わは水曜日や」- この言い方は西牟婁あたりの独特なもので、若い人は使わない。普通は「今日は何曜日?」だ。
湾内に迷い込んできたクジラを見て、「やにこい大きいなあ」と中学生がいうのを耳にした。「やにこい」は「ものすごい」という意味だが、別に「虚弱な」「病弱な」という意味でも使う。「あの人、やにこかったさかなあ」などと。
「つむ」ということばも県外では通じない。公衆電話が使用中だったので、「電話つんだったわ」と他県の友人にいうとけげんな顔をされた。「高速、つんだあるわ」―これは混雑しているということ。
「〇〇ちゃん、ある?」「ううん、ないでえ」―これもよく引き合いに出される熊野弁だが、どこでも使われているわけではなく、同じ南紀州のなかでも使わないところもある。
紀州の人は「ざじずぜぞ」と「だぢづでど」の区別がつかないといわれる。だけど、白浜や上富田あたりでは区別して発音する人も多いから、すべての土地でそうなのではない。
「でんだいこぼいたさか、れいどうこの上のどうきん取ってだ」-とまあ、年配の方ならこういうふうに言う。ぼくはこれでいいんじゃないかと思う。なんとも味があるではないか。
ただ、パソコンに「どうきん」と入力して「雑巾」と変換しないと怒っても仕方がない。(写真は串本)
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