最近は山道でほんとによくシカやサルと出会う。山道といってもれっきとした国道だ。それに遭遇しても瞬間に山に隠れるということもしない。昔はめったに里には下りて来なかったものだ。小学校の頃、近くの広い川原にシカが現われ珍しいからみんなでワイワイ言いながら眺めていたことを覚えている。当時の山はいまのように荒れていなかった。植林された山ではあったが手入れが行き届き、山が山として果たすべき役割をそれなりに果たしていたものだ。
そのむかし、国策でみんなが山に針葉樹を植えた。その後、これまた国策で安い外国材の輸入が自由化された。日本材の値が下がり、植えた樹が放置されるようになった。枝打ちも間伐もされないため密集して昼なお暗く地面に陽も射さない針葉樹林。土地はやせてゆき大雨がふれば土砂崩れの原因にもなっている。
これまで里ではあまり見かけなかった野鳥がこの頃よく自宅の庭の樹にとまって鳴いている。それどころか小さな野鳥を手でつかめるという信じられないようなことも起きている。 嘘でしょう? って、知らない人はきっというだろう。白菜の畑に野鳥の群がやってきて夢中で食べているのを手でつかんだという話はいくつも聞いた。
山間に住む知り合いの話だが、冬にもかかわらず井戸の水位が低い。山に吐き出す水がないというのだ。ある種類の樹が枯れかけているのも水不足のためらしい。樹が枯れれば山の保水力はいっそうなくなるという。山を追われた鳥やシカたちはどこに行くのだろう。
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