
熊野とは、いったいどこからどこまでだろう。
三重県とか和歌山県とかいうように正確な線は引けない。しかしまあ、三重県の南牟婁と北牟婁、和歌山県の西牟婁と東牟婁あたりがそれにあたる地域だろう。ごく大づかみにいうと田辺市から尾鷲市あたりまでを熊野と呼んでいいと思われる。
もう少し詳しくいうと、大峰山脈の南側は熊野川水系だから十津川村から下北山村、上北山村も熊野に含まれるだろう。十津川村には玉置山があり「熊野三山の奥院」と呼ばれる玉置神社がある。
牟婁とは「室」のことで、周りを山で囲まれた地形をさす。熊野とは「隈」のことで、奥の方の野だ。だから、思うに熊野とは都から見て「奥まった野」とでも呼ぶべきところだったんだろう。多分、「牟婁」も「熊野」も同じ意味合いをもった別の呼び名というべきか。
このブログのタイトルは「南紀州」だが、これとてはっきりした線は引けない。熊野と呼ばれている地方とほぼ重なるだろう。ただ、熊野と違って呼び名としてはずっと後世のもので、明るいイメージがあるように勝手に思っている。
天づたふ日の昏れゆけば わたの原 蒼茫として深き風吹く
山めぐり 二日人見ず あるくまの蟻の孔に ひた見入りつつ
(釈 迢空)
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