
イガミだ。
小さい頃からこの魚をよく食べた。親父が自転車で釣りに出かけ、戻ってきたときには大抵は数匹のイガミがぼっつり篭に入っていた。特有の大きなウロコを剥ぎ、はらわたを開き適当な大きさで輪切りにする親父の横で、色んなことを聞きながら飽きもせずじっと眺めていたものだ。
イガミは釣りやすい魚だ。それに美味だ。刺身もいいが、イガミはやはり煮つけがうまい。煮つけると白身の肉が少し反り返り、独特の香ばしい匂いがあり、食べると少し甘い。真っ白な目の玉も必ず食べた。イズスミのすき焼きにはとても及ぶものではないが、地磯で釣れる魚では上等な部類だろう。
長男が小学校にあがった頃、釣ざおを持たせ、エサをつけて海中に放り投げて数秒後にアタリがきた。両手で釣ざおを持っていた長男は「ウオー」と声にならない声を発した。見るとジリジリと引っ張られている。とっさに手助けして釣りあげると40cmあった。長男が喚声をあげたのはいうまでもない。
何でもエサになるが、夏場は主にエビやカニで冬場は海藻類だろう。釣りに詳しくなくても釣れるし、調理も難しくない。酒、みりん、醤油で少し時間をかけてアクを取りながら煮込む、それだけでいい。いまだ食べたことがないという人がいたら、騙されたと思って試してみるといい。
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