
少年の頃。
友だちに誘われてレース鳩を飼うようになった。レース鳩はお寺などにいる鳩とは少し違う。というか、見た目は素人目にはほとんど変わらないが、飛んでいる姿がまるで違う。何がって、スピードが違うのだ。
いま思えば、どうしてあんなに夢中になったのか分からないが、一組の夫婦の鳩をもらい、最初は小さな鳩舎(きゅうしゃ)を作り、数が増えるにつれ大きなものを作った。一番多いときには30羽近く飼っていた。一日に2回、朝夕に外に出し飛翔させた。
最初は雄雌の区別もつかなかったし、ましてやどれがいいレース鳩でどれが良くない鳩なのかの見極めなどできる筈もなかった。鳩との日々の付き合いで、数ヶ月もすると色んなことが分かってきたし、彼らとの意思疎通もできるようになってくるから不思議だ。
鳩舎で卵を産み、雛になり、成長してゆく姿をいく度も見た。レース鳩は飛翔の速度を競う。たとえば500キロ離れた地点から飛ばし、帰って来るまでの時間で速さを割り出す。個体によって速度は違うが、普通は平均時速70キロは下らないだろう。
と、まあ語ればきりがない。群れをなしてはるか上空を飛翔する鳩たちをよく見上げていた。
あの頃は空がどこまでもどこまでも高かった。
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