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【2024/04/19 20:03 】 |
遠い日のつり橋
 
 このつり橋を二人で渡ったことがある。
  もう秋が深く風が冷たかった。「夏に来てここから川に飛び込もか」というと、「いいよお」と語尾をすこし上げた返事が返ってきた。「夏ならもっと水あるやろね」と真顔で聞いてきた。橋の真ん中あたりで手をつないだときの会話だったが、いまも消えずに耳の奥に残っている。

 この辺りにはこんな風なつり橋があっちこっちの谷によくかかっている。かつては暮らしに欠かせない道だったが、集落がそっくりそそのまま消えてしまったいまでは行き交う人もほとんどない。猪を撃つ猟師や登山で山をゆく人たちや、あるいは山の仕事をする人たちがたまに通るだけなんだろう。

 山々には常緑の広葉樹が生い茂っている。野生の動物や鳥の鳴き声がどこからともなく聞こえてきては消える。ふと、下の谷川の川原におりて透き通った流れに手を入れてみたくなった。木々が生い茂り、枯れ枝に引っかかりながら石ころと砂利の川原におりた。あの日も、二人は透き通った流れに手を入れた。「冷っこいわあ」 「飲めるやろか」。水が流れる音に二人の声も流れていった。

 見上げると、つり橋はけっこう高い。「あがな高さから飛びおりるらて出来るもんか」と思わずつぶやいた。遠い日のつり橋がすぐそこにあった。
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【2011/02/06 20:03 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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