
このダムは治水が専門だ。
昭和14年10月17日、未明から降りつづく雨は凄かったらしい。時間雨量102mm、1日の雨量421mmという集中豪雨で、流域に大きな被害が発生した。特に、田んぼや畑といった農地の被害が甚大だった。その苦い経験をもとに、この小匠ダムは「農地防災」を主目的として造られたという。
このダムは「穴あきダム」である。「穴あきダム」とはその名のとおり、ダムの下腹部に穴が開いているダムのこと。平常はまったく水を貯めず、ただ川が流れている状態だ。これをスルーするという、らしい。 別に「魚道」もあるから川に生息する生き物も自由に往来している。もちろんヘドロなどの土砂の堆積もない。
よく出来ているなあと思ったのは、この「穴」から流れる水量の上限が決まっていて、それを上回る大量の水がダムに押し寄せる洪水時には、流入量の一部が放流される。残りがダムに貯水されてゆきダム湖の水位は上昇する。洪水の沈静化するにしたがってダムへの流入量は低下、それに伴い貯水量は減少し水位は低下、やがて元の通常の状態に戻っていく。
県下のダムをいくつも見てきたが、これはなんとも個性的なダムだ。地元の人に聞くと、「春に来やんせ。そりゃ桜がきれいや」との返事だった。R42号から車で30分ほどのところにある。那智勝浦町にゆく機会があれば、ぜひ現地へ足を運び見られてはどうだろうか。
PR