大きいものは7~8センチあった。
これが「バイ」だ。夏が来ればこれが食べたくなる。学名は「マガキガイ」というらしいが、小さい頃から「バイ」と呼んでいる。数人の同級生と海に潜ってこれを獲り、岩場で焼いてみんなで食べた。この貝を食べたことがある人はご存知だろうが、これが実に美味なのだ。
小学から中学のころは、夏休みといえば海だった。ほかに行くところはなかった。麦藁帽子をかぶり自転車で向かったのは近くの海岸で、行けば日がな一日そこで過ごした。この岩礁地帯は春には「ガシラ」釣りの場であり、夏は泳ぎの場だった。いくども溺れそうになりながら泳ぎを覚えたところだ。
海に潜って獲るといっても水深2mからせいぜい3~4mで、それ以上は無理だった。あの頃に潜った岩場はもうすっかり環境が変わってしまった。きっと、潜ってもあの「バイ」はないだろう。しかし、42号線を走っていると、「ああ、ここに潜ったらバイがあるぞ」と思う場所が白浜以南にはいくらもある。
あまたある貝のなかでも、これほどうまい貝は他にはない。
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